「今年も出席が少なくて決め事がたいへんでした・・・」私の暮らしております地域、その自治会年次総会の資料を届けてくださった近所のご門徒さんの言葉です。近年、自治会をはじめ地域を結ぶ組織の弱体化が確実に進み対応に頭を痛めているようですが、お寺もまさしくそのまっただ中に立されています。役員,委員,世話人さんの人事あるいは高齢化による組織維持 の問題、参詣者の減少等に苦慮している現状です。この状況をどう打破するか、各研修会への参加,いろいろな寺院活性化の実例資料の閲覧等、その糸口を見いだしたいという思いを持っています。ただその一方、こんなことはお寺の環境が違っているから難しい、資源がない、能力がない等々出来ない理由をつけて下を向いてしまう自分がいるのも事実です。そんな鬱々とする中、最近考えさせられることがありました。旧知の方ですが、ふとした事で、傾きかけたご自身の商売を立て直されたお話をして下さったのです。「・・・何か特別なことをしたわけではありません、ただ、初心に返っただけです。長年商売をするうちおろそかにしてしまったことを反省し、やり直しただけです。肝心なことは“ほんのちょっとしたこと”ソフト面もハード面もそれを大切に出来るかどうかその一言につきます。機械操作一つでほとんどのことが出来てしまうハイテク化の現代、意外かもしれませんが、ふれあい(会話)を求める若年,中年の方が逆に増えていますよ。だから、ちょっとした事ですが、笑顔やことばは大切です。そしてこれからは、集約ではなく個々への対応がより重要になるでしょう」
私達も出来ない理由探しばかりをし、すぐに、簡単に見直せることまでも目をつぶって来たのかもしれません。お寺の役員、門徒として、有縁の方々のいろんな相談に丁寧に対応する姿勢を取っているかどうか、お寺でのさまざまな行事はためになるというような宣伝に努めているか、など幾つもあるような気がします。
今後ますます家から個へ宗教意識の変革が進んでいくと思われます。足下を再度見直す努力をしなければならないと思います。これまでそうであったように“ちょっとしたこと”を厭わず大切にするところから個とのつながりを強くしてきたはずです。それが組織の基です。そのきっかけをもらえるアドバンテージをまだ私達は握っているのではないでしょうか。僧侶・門信徒一丸となって、寺門興隆に努めていきましょう。
あらためて蓮如上人のおことばを考えたいと思います。
「・・・一人なりとも、人の信をとるが、一宗の繁昌に候ふ。・・・」
(「蓮如上人御一代記聞書」より抜粋) |