阿弥陀さまは、まず最初に「地獄・餓鬼・畜生のない国土を建設したい」と願いを述べ、願いを完成させることを誓われました。
戦争は、この世における生き地獄です。そして今も世界のどこかで戦争が繰り広げられています。人間はなぜこのような愚かなことを繰り返すのでしょうか。

作家の落合恵子さんが、音楽家の坂本龍一さんとの対談の中で、「動物は必要な分だけしか食べない。人間は『もっと多く』を望む。だから戦争も南北問題も起こる」と話しておられたことを知りました。私たちは日常生活の中で、つねに「もっと多く」を望んで生きています。これを仏教では「我執」と教えます。しかし、これは個人にとどまらず、国家・民族も我執の中でしか存在しません。先の日本の戦争は「東洋平和のための聖戦、正義の戦い」と平和や正義を自国の都合で使い分け「もっと多く」の領土支配を望んだ我執に基づく戦争です。仏説無量寿経というお経の中には、「兵戈無用」(軍隊も武器も要らない)と説かれています。仏法が広まることによって、軍備は不要になることを教えています。どんなにきれいな言葉でごまかしても、戦争は「殺し合い」です。

動物は、いのちを保つためにのみ殺生しますが、人間は他国を支配するために、殺生をします。戦争は天災ではなく、人間の我執煩悩によって生み出される最も残酷な人災です。まさに地獄です。他の命を奪ってしか生きられない私たちは、罪の深さを知らされながら、せめて仏によって誓われた兵戈無用の共なる世界をめざして歩きたいものです。

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